山笠が見せてくれた、ある妻の愛

GION1・1の裏の小路に小粒だが味自慢の古い店が並んでいる。 
その中に680円の晩酌セットを出してくれる食堂がある。
安月給のサラリーマンにはとてもありがたい存在だ。
若い夫婦がコアになって切り盛りしてる。
夫は千代流れののぼせもん。今年は当番町だから気合いも入ってるが、役割もいっぱいあって大変だ。
飾り山やかき山を徹夜で見守る当番も回ってくる。 

ふと立ち寄った7月のある夜、夫はいなかった。
「今日はおらんの?」
と聞くと、
「はい〜、今日は山小屋の見張り当番なんですよ〜」
語尾に喪失感が漂っている。
「なんかぁ、いつも隣にいる人が居なくて〜、」
小さい声で、
「さびしい」
「えっ、たった一晩いないだけやろうもん」
「だってぇ、初めてなんですよ、夜にいないなんて!」

まいった。
初々しい妻の愛を見せつけられた。

我が妻の愛はどうだろ?
まさか、亭主元気で留守がいい、じゃないだろう。
そう信じたい…