ひろみがひろきに同意を求めたこと

ひろみは証券会社のカウンターレディ。カウンタの向こうで微笑を絶やさない。
会社の業績はまずまずの好調を維持している。日本人1億総中流と豊かさを謳歌した時代、ひろみの会社も顧客の裾野を拡げようと、サラリーマンの出勤時間帯に社の前の歩道でビラ配りをすることになった。そう、中流意識のサラリーマンを顧客として獲得しようという作戦、名付けてサラ引き大作戦。
入社して3年目で初めての街頭ビラ配りに、ちょっぴりの不安とちょっぴりのワクワク感を感じながら歩道に立ったひろみ。愛くるしい笑顔と派手なえくぼが武器で、カウンタレディの中でもトップクラスの成績を維持している。


道行くサラリーマンにとって、近付いてくるビラ配りはめんどくさい!
それが男だったら最悪。やらされ感むき出しの女も最悪。ティッシュが見えてると少しはまし。それが、愛くるしい笑顔の若い女ならがらりと変わって、自ら寄っていく。^^;
そして、「おっ、今日は朝からついてるんじゃないかぁ。」なんて思っちゃう。


ひろきは、34歳、ばりばりのサラリーマン。主任に昇進したばかりで、自他共に認める今、波乗り絶好調〜人間。自分に超自信があり、出来ないことなんか何も無い、それどころか、初めてのことは俺に任せろっ!みたいに、妙にポジティブだ。会社の中だけで通用する程度の実力しかないのに、俺はどこでも通用するっなんて思ってる。挙句の果てには、この会社はいつの日か俺が背負って立つっ!なんて勝手に決めている。


(つづく)