佐渡のばぁちゃん

昨日は、横浜から佐渡島へ車で帰省した。
佐渡島は妻君のふるさと。
毎年1回は帰省する。ばぁちゃんがALSという難病に罹り足腰が不自由になりはじめてもう10年くらいたっただろうか。ALSは筋肉が縮退する難病なんだ。
最初に声帯を震わす筋肉が縮退し、しゃべることがままならなくなった。
ばぁちゃんのしゃべる内容が聞き取れない。当時は誰も病気とは思わず、認知症が始まったと思った。


しかし、どうも記憶はしっかりしてるし、しゃべる内容もおかしくはないし、と家族が気づき、これは一度医者に診てもらおうという事になった。そしてようやくALSということが分かった。


そうか、認知症じゃなかったのか、良かった。でも、そのALSって病気はどうなるんだろう?
本人も家族も安堵と新たな不安を同時に感じた。
全身の筋肉縮退が始まると数年で自力で食事も出来なくなり、果ては呼吸も困難になる。生きてゆくことは出来なくなる。
ばぁちゃんは、capの妻君である娘の前で泣いた。


ばぁちゃんが抱えてしまった難病は徐々に進行し、今では歩くことが出来なくなった。四つん這いで亀の様に移動するしかない。
昨夜は、ご馳走が並んで二つの家族が顔を揃えた賑やかな食卓に「自分で行く」と、妻君の手助けを拒んで自分の部屋から這って来た。毅然としていた。
その姿にcapは打たれた。哀れを感じることはなく、「生きる」意志を強烈に感じた。弱気を見せず、「私は元気よ。ほら、まだ自分でちゃんと動けるのよ。」というアピールをしてくれたんだ。


元来、明るい性格のばぁちゃん、capの白髪のソフトモヒカンを見て大いに笑ってくれた。それこそ顔をくしゃくしゃにして。


ひとしきり皆の笑顔とたわいもない会話を楽しんで、また自力で部屋に戻って行った。手を貸そうとすると、「いや、一人で行く。」と言ってね。


ばぁちゃんは昭和4年生まれ。9月で82歳になる。
若い頃は田園調布に住み、洋裁の腕を磨いた。
佐渡に戻ってからもスーツを作って家計の足しにしたらしい。
もうその腕を発揮することは出来なくなったが、まだまだ元気で脳は活発に活動している。