小川洋子 「博士の愛した数式」


ゼブラから借りた本。この本ほど長く僕と一緒に旅をした本は無い。
優しさ溢れる表現で、とても読みやすく、頁数も300足らずなのになかなか読み進まず、借りて早くも10日が過ぎた。ようやく残り30ページ弱になった。


気が付けば、この本はいつも僕のカバンの中にあり、一番取り易い場所に収まっていた。
飛行機で北海道に飛んだ時は機内に持ち込むチャリング用リュックの中に入れていた。
少しずつ読んで、ドリンクサービスの時は前のシートのポケットに入れた。


樽前山登山の時もリュックの中にあった。山頂の強風を避けるために下り斜面の岩陰に隠れた時、風に乗りリュックに侵入した山頂の砂にまみれてしまった。
ざらつく本を手に取り一頁毎に砂をきれいに取ったのは苫小牧のホテルルートイン1102号室だった。


本に描かれた情景、行間に滲む愛情と優しさが胸を打ち、はらはらどきどきして次の頁をめくる。残りの本の厚みが薄くなった事に気付いて、はっとする。
もっと長くこの世界に浸っていたい。
そして本を閉じる。


数字に潜む不思議な真実を分かりやすく織り交ぜながら人の愛を語る作者はすごい。天才じゃないか。


北海道から関西空港経由で博多に戻る空の上でも20頁くらい読んだ。
名古屋に向かう空でも読んだ。
大阪のオクトーバーフェストの帰り、博多に向かう新幹線でも読んだ。
10日間かけていろんな場所で、いろんなシチュエーションで読んだ。
残り30頁弱、多分今日中に終わってしまうだろう。


心に残る本になるのは間違いない。