ショートストーリー 「夜空に赤々な星」


女子高を中退した17歳と
博多の須崎公園でテント生活する「おいといておじさん」の交流を描く。

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それぞれの立場でそれぞれの場所で夜空を見上げる二人

社会的弱者の二人が、ある屋台を中心に拡がる飲み友ファミリーとの
関わりを通じて、社会との「つながり」を取り戻していく姿を描く。

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憩い
つながり

無縁な自分から、独りじゃなく一人であることの感謝に気付かせる
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希望を失い、生きてることの意味も分からず、ぼんやりと空を眺める。
そこには、普段と違う赤い星がある。
瑞希の感性が僅かに反応する。
おいといておじさんの乾きかけた感性もほんの少しだけ反応する。
だが意識の世界には登場しない。


=====本文(1)=====

瑞希(ミズキ)はどこにでもいる女子高生。
悩みをたくさん抱えている。
仲間もたくさん居る。
明るい。
けど、時々切れる。
前頭葉に障害があるわけじゃない。
ただ、幼いだけ。
きっかけは殆どが些細なこと。
少し気に入らないだけなのに。


切れる時の自分が分かる。
切れそうになった時、鬼の光が瞳に現れる。
その瞳に周りが目をそらす。
それで切れるのが加速する。

ひとしきり切れた後、ふと自分が嫌になる。
「どうして、どうして?」
「どうして私はこうなるん?」
夜遊びのふりの帰り道、見上げた夜空に赤々な星を見つける。
「あんな赤い星って前からあったっけ?」
でも、オリオン座の何とかって星(ベテルギウス)と、おおいぬのシリウスと、
こいぬの何とかって星(プロキオン)が冬の大三角だってことは覚えている。
冬の夜空を見上げるのは大好きなのに、星座や星の名前を覚えるのは
めんどくさい。
「名前なんかどうでもよかよ。要はそれを感じることだよ。」
そう思う17歳。

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