ショートストーリー 「夜空に赤々な星」本文(4)

=====本文(4)=====
「大将、最近おいといておじさん見掛けんよね。来てる?」
「あぁ、あんまり来んね。月一来るか来んかやね」
「ふぅん、あの人ホームレスなんよね?」
「そうそう」
「そう言やぁ、NPOだか何だかを通じて年金を貰えるようになるぅ言っとったよ。
アパートに住めるぅ言うて喜んどったよ。」
「そりゃ良かったわ」
「だけどさ、うまく社会になじむといいねぇ。ちょっと心配やなぁ」
夜11時過ぎに悟空と大将がおいといておじさんのことを話しながら
焼酎黒霧のお湯割りをちびりちびりとやっていた。
「大将の焼き豚足はうまいねぇ」
と悟空が豚足にかぶりついた時、ふらっと、当人が顔を出した。
「あらぁ、ひさしぶりぃ。今ふたりで話しとったんよ」
「どうしとったん?」

「はい〜、まぁその〜」
「ほらほら、立っとらんで入って座りぃ」
「あらあら、その目どうしたんね。真っ赤やん」
「はぃ〜、それがその〜」
「友達が〜、そのぉ、死にましてん」
「昨日の朝死んどるところを、わたしが見つけましてぇ、えぇ」
「えっ、友達って、その、、」
「えぇ、まぁ、公園在住のその〜」
「そうやったの、でその人、どうなったん? 身元引受人は見つかったと?」
「それがそのぉ、てがかりっちゅうもんがひとっつも無くてですね、
とりあえず、火葬して骨壷に納めて、官報ちゅうもんに載せて名乗り出るのを
待つっちゅうことになるらしぃんです。」
「ふぅん、そりゃ哀れやなぁ」
「はいぃ〜」


「病気やったと?」
「いやぁ、そんなその〜、なんか具合が悪かとかはですね、えぇ〜、まぁ、
しょっちゅうというか、慢性ちゅうかですね、でも、死にかけてるっちゅう
ことは、な〜んもなかったんですよ。はいぃ」
「ふぅん、そりゃ突然死たい」
「心臓に穴ぽこでも空いとらっしゃったとじゃなかね?」
「えぇ〜、まぁ分からんのですけどぉ、はいぃ」
「昨日からですね、今日までですね、思い出しては涙がこぼれてですね、
なぁんもできんとですよ。」
「でもですね、やっぱ、人間ですね、食べんとですね、生きていけんとですよ。
私もですね、馬鹿ですからですね、友達が、あれしたわけだからですね、
ず〜っと弔ってですね、おろうと思ったんですけど、やっぱですね
腹が減ったとですよ。なさけんなかなぁち思ってですよ、恥ずかしかです。」

「な〜んも、な〜んも」
「そんなんあたりまえ」
「ささっ、飲みましょ」
「大将、俺に付けといてね」
「はいぃ、お湯割り一丁ぅ」
錦ちゃんの低い声が響く。
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大将と話したい。
そう思って須崎公園からやって来た。
悟空さんも居た。
この寂しさを分かってもらうだけでいい。
誰かと話しをしたい。
わしの人生って、岩さんに似てる。
わしもいつか死ぬ。一人でひっそり死ぬ。
死んでも誰も気付かない。
うわぁ、そりゃぁいやだ。
腐っちまうよ。わしが腐って、みんなに嫌がれるよ。
死んでも人に迷惑がられるのかよ。


このまんまでいいのかよ。

復活したいよ。
仲間に入りたいよ。
大事にするよ。マスターと悟空さん。仲良くして欲しい。
うぉ、嬉しい。悟空さんがおごってくれるよ。もっともっと仲良くなりたいよ。

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