ショートストーリー 「夜空に赤々な星」本文(6)

=====本文(6)=====
数日後の瑞希
母親と口げんかし家を飛び出した。西公園に歩いて行く。
参道の鳥居をくぐって、まっすぐで急な上り坂を登りきると、
そこに黒瀬神社がある。
瑞希は境内の一画にある石製のベンチに座り、何を見るでもなくぼんやりと
時を過ごしていた。
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いつから、こんなひねた娘になっちゃったんだろ。
ほんとは、ふつうなのに。
普通ってどんなことか分かんないけど、とにかく心の中は普通なの。
だけど、口から出るのは真逆。
この口がいけないんだ。
心の中と口や手や足や目がちぐはぐなんだよ。ギャップがあるっていうか。
みんなが離れて行っちゃったよ。
だ〜れもあたしのことなんか見てくれない。
麗子(よく遊ぶ友達)だって本音では付き合ってくれてない。
それは、あたしのせい?。
てか、あたしが普通じゃないってこと?。

人って変われるの?
タイムスリップできるんだったらやり直したいよ。
ぷっ、無理無理。
やりなおしたところで、きっとおんなじになる。

どうしよう、このまんまじゃとんでもない女になっちゃうよ。
テレビドラマに出てくるどうしようもない女みたいに。
やだよ。

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瑞希は高校中退を決意した。母親に相談もせずに。
自分を変えたいという思いが、周りを変えないと自分は変われないという
結論を導き出した。


瑞希の母親はいわゆる普通の人々。
ばついちで瑞希達を一人で育ててきた。
子育てに苦労してきて、子供のために自分を犠牲にしてきた。
それだけに、子供は自分の言うこと、やることを全て理解してくれると
信じている。
だけど、子供の気持ちに鈍感。
瑞希の話し相手になることができない。
なんで瑞希は自分に話してくれないんだろうと思う。
子供からすれば、大人のほんの小さな態度や言葉が重く心にのしかかる
ことがある。
母親はそれに気付かない。
瑞希が離れる理由に心当たりがない。