ショートストーリー 「夜空に赤々な星」 本文(11)

「こん金はですね、私が拾ったとですから、私ん金です。」
「なに言ってんの、あたしが取り忘れたんだって言っとぉでしょう!」
「はいぃ、でもですね、証明はでけんとじゃなかですか。」
「だからぁ、、、、もう、、めんどくさい〜っ」
「まぁ、聞いちょってください。はいぃ。」
「あなた様はこれから友達に会うことになってるいうのに、電車賃になる
お金を失くした。このままじゃ友達に会えない。困ってしまった。
お手上げだ〜。」
「そこでですね、私は特別に、あなた様ん困り顔を見かねて、こん金を
貸してあげることにしますです。はいぃ。」
「えぇっ、貸す!? あたしのお金をあたしが借りるわけぇ?」
「はいぃ、貸します〜。その代わりぃ、なんですが、今日中に返して欲しか
とですぅ。」
「今日中って、そんなん無理に決まっとっでしょが。」


「いいや、あなた様なら出来ますですぅ。あなた様には、やってやるっちゅう
オーラがあります。はいぃ。私には見ゆっとです。
あなた様が勝つ姿がですよぉ。」
「勝つぅ!? 何に? 誰に? 勝ったらお金が入るってことぉ?」
「そうなんですぅ。勝つとお金が増えるんですぅ。はいぃ。」
「ってことは、負けるとお金がなくなるってことよね。」
「はいぃ、だけど、あなた様は負けんとです。」
「なんで、んなことが分かると?」
「はいぃ、あなた様は負けんとです。」
「あたしが、その勝負をするとでしょう? それって何?」


「はいぃ。パチンコですぅ。」
「えっ、パチンコ!? あたし、やっとことなかとよ。勝つわけなかよ!」
「あなた様は勝つとです。はいぃ。」
「負けるわよ。負けて文無しになるわよ。」
「いいや。あなた様は勝つとです。負けるイメージはここに置いといてですよ、
勝つ、勝つ、勝つと唱えてみんしゃい。勝つ気になってくッとでしょうが!」
「負けるに決まっと!」
「勝つとです。負けは置いといてください。さぁ、唱えんしゃい!」


「勝つ! 勝つ! 勝つ!」
なんだか、わけの分からない自信の芽のようなものが心の中で膨らんで来た。
「で、今から行くとね。」
麗子に会うよりこっちの方が面白そう。
なんでもやってやるよ。
これから何が起こるのか。なんだかワクワクして来た!
麗子の方は断っちゃおう!