ショートストーリー 「夜空に赤々な星」 本文(15)

冷泉公園に着いた。
屋台が7軒出ている。
そのちょうど真ん中あたりに、白看板に赤い文字の「錦ちゃん」がある。
夜7時半。この時間は観光客が多い。
先客は女性だけの3人組1組だった。
どうやら馴染みの客らしく、大将と親しげに話している。
大将がおいといておじさんに気付いた。
少しぶっきらぼうに「あぁ、いらっしゃい。」と声を掛ける。
「そん女んこは、なんね?」
「はいぃ、はなせば長くなるっちゃけど、はなさなわからんですよねぇ。」
「う〜ん、まぁ、入りぃ。座らんね。」
長い話が嫌いな(少し短気)大将はめんどくさそうに言う。
「今、こん瑞希ちゃんがですよ、初めてパチンコしてですよ、5千円も
勝ちんしゃったとですよ。はいぃ。」
「へぇ、なんちゅうたかな、ほら、なんとかラックとかなんとか」
「それって、ビキナーズラックでしょう!」
と女三人組がハモる。
この三人組はファミリーの三姉妹。
「そうそう、それそれ。ビキナーズラックよ! そりゃ凄かねぇ。
そんなら、今日はいっぱいお金を使っていかんね。」
大将がかおをほころばせる。

三姉妹は、おいといておじさんとは無縁のはずの若〜いしかも可愛い女のこの
登場に目を白黒させている。
興味津々。二人を質問攻めにし、あっという間にここに到る物語を丸裸にした。
「へ〜ぇ、面白い展開ねぇ。なかなか出来ない体験よね。」
と長女。
「だけどね、その相手がぁ、おいといておじさんだったってのが残念やわ〜。」
と次女。
「何もなしよりずいぶんましよ。^^;」
と三女。

瑞希はと言えば、初めての屋台にどきどきしていたのだが、三姉妹と
おいといておじさんと大将のやり取りに自分も強引に引きずり込まれ、
その話しが終わった時には、すっかり常連の一員に加わった気分になっていた。


8時半を過ぎ、そろそろ帰り顔になってきた瑞希
そこへ、四兄弟が揃ってやって来た。