旅・長崎・中日1) 中島川石橋群
朝5時15分、夜明け前の中島川石橋群は仄暗い。
ひっそりとした静寂に包まれている。
自分以外の人影は、ジョギングや愛犬の散歩をする人だけだ。
東の低い空には薄い下弦の三日月が白く輝いている。
明日は新月だなと独りごち、袋橋から上流に遡ることにした。
一つ一つ丁寧に回った。
徐々に空が明るくなってゆく。
遠くの背の高いマンションが朝日を反射してまぶしく輝き始めた。
6時半ごろ出来大工町の支流の最初の石橋の上で涼風が吹き抜けた。
地元のお年寄りが通りかかる。
「おはようございます。」
「ここが一番涼しい。いつもここに来る。」
少しはにかみ混じりに応えてくれた。
聞き取りづらい口調で眼鏡橋の見え方のミステリーを語ってくれたのだが、残念ながら、半分も理解出来なかった。
「ハートの石もある。」と言いながら立ち去ろうとした。
その背中に
「眼鏡橋あたりにあるんですか?」
と尋ねると、
「あぁ、ピンクさ。」と、少しだけ振り返って呟いた。
6時37分、突然せみが鳴き始めた。
主役は、ここもくまぜみだ。
そう言えば、ジージョのコメにハート石のことが書いてあったな。
ということで、また眼鏡橋へ。
川床に降りる。
ザリガニやはぜ、クラゲを見つけては、心の中で喚声をあげた。
7時ごろ、それまで止まっていた水が下流に向けて流れ始めた。
そして、朝日の陽光が飛び石の間の水の流れを芸術に変えた。
川面すれすれから眺めた眼鏡橋の写真は、感動をもたらした。
きれいでしょ。