ぼくしんかんせんのった?

新幹線が川内駅に入線した時、降りる列に幼児二人を連れた母子連れの子が、ぼくしんかんせんのった?と母親に訊いた。
乗ったよ。これが新幹線よ。
子は続けて、つばめのった?と訊いた。母親が答える前に、更に続ける。
でんしゃにのるの?
しんかんせんのった?
つばめのった?
舌足らずなフレーズを何度も繰り返す。
母親は、少しもいらいらを見せずに、優しく答える。
新幹線つばめに乗ったんよ。
子は、時折、大きく丸く開かれた目で車内を見渡す。
僕は子と目が合ってもいいように頬に微笑みを用意して備えた。
目が合うことはなかったが、純粋な好奇心が浮かんだ瞳が心に焼きついた。


この子の脳は、鹿児島中央駅で新幹線の自由席車両に乗り込んで、僅か10分強というあっという間で川内駅に着き、もう降りるんだという現実を一生懸命に整理整合しようとしているんだろう。
刺激的な経験だったに違いない。脳の活動の不思議を目の当たりにした思いがする。


母親は、結果的にそんな子の脳の活動を優しさでサポートしていることになる。
親は、かくありたい。
もちろん、父親も。(^_^)