旧友去る

大分日帰り出張から帰って来たのは夕方5時半頃。
出た時と同じ部屋かどうか、ぐるっと眺めてチェックするのが日課になっている。
よし、今日も異常なし。


気を緩めて、これから寝るまでの過ごし方を考える。
まず洗濯。干し終わったら外に出る。割引券があるからベローチェ博多大博通り店に行くか。いや待て、ウォーキングはどうする?
今日は起きた時から腰の右側に張りがあるからやめとくか。しかし、温湿布はした方がいいなぁ。
と、温湿布をした。最も効果的な場所を探すのに少し時間がかかった。押して痛いところが必ずしも効果的な部位とは限らない。固まっている筋肉を大方カバーする形で貼付するのが良い。
ストレッチをやり、張りを感じる筋肉の流れを見つけ出す。押すと痛い部位も含まれている。よし、これならいい。


ブゥゥゥ。テーブルに立てて置いたケータイが振動しながら回転する。ブルーのLEDも光った。旧友からのメールだった。「今どこにいる。」すかさず返信。「博多に決まってるよ。」
電話が来る。「いつもいるとは限らないじゃないか。博多に居るんなら飯一緒にどうだ。」「う〜ん、お前転勤するんだろ。いつ行くんだ。」「明日さ。」「それを先に言えよ。分かった。後で最後の飯にも付き合わなかった冷たい奴だって言われたくないからな。どこにいる?」


肉好きな旧友、肉を食いたい。だけど、昨夜焼肉だったから、今夜はステーキかハンバーグがいいと言う。
旧友のマンションの近くのステーキ屋に行くことにした。
歩くと20分強だなぁ。ウォーキングにちょうどいいか。チャリはここんとこ乗ってないから整備が必要かもしれないしな。
小走り混じりのウォーキングで20分掛からなかった。


旧友は先に食っていた。ふざけた旧友だ。まぁいい、こんな時は話したいことが山ほどあるんだろ。そう思って文句を飲み込んだ。
ウェイターがやって来て、俺の前にハンバーグセットを置いて行った。旧友が勝手に頼んでいたんだ。何て奴だ。相変わらず、俺の趣味を知っているつもりでいやがる。俺は軽くパスタで良かったんだ。まぁいい。こいつのわがままと知ったかぶりともしばらくお別れだからな。


旧友は、俺が食いだすと、堰を切った水のように怒涛の勢いで話し始めた。いつ終わるのか?10分で嫌になった。口を挟む隙がまるでない。さすがに聞いてるだけじゃぁ飽きる。自他共に認める聞き上手の俺もこの勢いには閉口した。
たまらず、句切りを待たずに席を立った。「トイレに行ってくる。」旧友はしゃべっていた口を開けたまま、「えっ、あぁ。」と頷いた。


トイレで鏡を見ながら、旧友を黙らす手を考えた。「そうだ、ショルダーにワックスを入れてあったなぁ。」ワックスをたっぷり手に取り、ソフトモヒカンをハード仕様にした。白い針千本が頭上に出現した。「よっしゃぁ。」


トイレから戻った時、旧友はケータイに両目を寄せていた。俺は席に座らず立ったまま旧友が俺を見上げるのを待っていた。
旧友は右手を水の入ったグラスに伸ばした。「水を飲むんじゃない!」と言う俺を見上げた旧友は、目と口を大きく開け、しばらくフリーズしていた。「フリーズ止めっ!」と号令をかけたところで、ようやく言葉が出て来た。
「な、なんじゃそれ、その頭ぁ。」
「ははは、この頭かぁ。ふふ、50過ぎてもこれくらい元気じゃなきゃだめなんだよっ!」
「お前、さっきから愚痴ばぁっかり言ってんだろ。ぜ〜んぶ忘れて転勤しなきゃだめなんだよ。その愚痴持って行ったら、みんなに嫌がられちまうぞ。」
「・・・・・・まぁな。」
「んじゃ、俺帰るぞ。元気でやれよ。」
「え、もう帰るのか?」
「あぁ、これ以上愚痴を聞きたくないもんな。やることあるし。あ、そうそう、餞別代りにお代はまとめて払っとくから。じゃあな。」


と帰って来た。頭は店を出る前に元に戻した。
ふぅ、疲れるやっちゃ。


はいぃ、以上は、明日旧友が来るってんで、この脳が勝手に作ったフィクションでした〜。
さてさて、明日は旧友をどこに連れて行こうかなぁ。
昨日と今日は休肝日だった。明日は連休前最後の博多ノンカタになるなぁ。