キリコ 3

キリコはヒロインだった。
皆に可愛がられていた。少年の様な顔立ち。頭も良くて、中性的な魅力を放っていた。フェロモンはその愛くるしい笑顔から漂っていた。
そのキリコが俺に接してくる。
何か信じられない想いだった。


当時の俺は、こと女に関しては何の自信も無かった。そして、好かれたいという欲も無かった。
この2年前に一人を好きになったが、あっさりふられた。そして、俺の知らない男と結婚した。
俺って、まだ男の魅力が磨かれていないんだと思うことにした。
原石としてはなかなかのものだと、妙に自分を信じていたから。
だから、何でも経験することにしていた。
そんな俺だから、遊び仲間の女達の誰か一人と、特定の女という付き合い方はしなかった。


遊び仲間のリーダーはキリコを、シャイだが伊達男のシュンにくっつけようとしていた。
初めのうちはキリコも楽しそうにしていたが、だんだんキリコの興味が引いていくのが分かった。
腹を満たした猫が、出された餌に無関心でいるのと同じだった。


ある日、キリコから食事に誘われた。
「あのね、今夜、食事に付き合って欲しいんだけど。ちょっと、相談があるんだ。」
平日のアフターはいつもフリーな俺は、一も二もなく「OK」


一緒に俺のアパートまで帰り、トレノを出して親友がバイトしている喫茶店までドライブした。
俺は、キリコから誘われたことが嬉しくもあったが、いつもと違う雰囲気にドキドキしていた。
「相談って何だろうな?」


ハンバーグセットを平らげ、俺はコーヒー、キリコはダージリンの段になり、キリコの口から思わぬ話しが飛び出した。
「実は、三木さんから、付き合って欲しいって申し込まれたの。」