3回目の事件へ(フィクション)
狙いは僕なのか?
そう思うと無性に不安になった。見るもの全ての色彩が失われ、モノトーンの世界に入り込んでしまった様だった。
僕が存在していたのと同じ空間で3人の命が失われたのだ。しかも全員鈴木姓。鈴木姓に意味があるのだろうか?有るのだとしたら、こんなに気味の悪いことはない。意味は無いんだ。たまたまなんだと思いたい。
あの老婆はどうだ?博多祗園交差点の事故の時は、その直前にはっきりとその姿を見た。でも横浜の通勤電車での変死事件の時は、見た気がするという程度で確信が持てない。
ならば単なる偶然だと考えるのが楽でいい。僕の心に生じた不安をひとまず払拭してしまいたかった。
1週間後、僕はトヨタ自動車九州を訪問するために九州自動車道を福岡から北九州方面へ走っていた。トヨタを訪問するのにホンダのフィットシャトルハイブリッドで行くのはいかがなものかと考えたが、空いてる車がこれしかなかったから仕方ない。
ところで、フィットシャトルハイブリッドのオートクルーズ機能は高速道路での運転をとても快適にしてくれる。80km/時にセットすると上り坂も下り坂も80km/時をキープするためにアクセル量が最適に自動コントロールされて、結果的に高い燃費性能を発揮する。その燃費は20km/l超は当たり前で、時に30km/lに達することもある。
右足をアクセルレバーから完全に離して床にぺたんと置いていられる。これは楽だ。疲れも小さい。
この日は、スピードを80km/時にセットして左側の走行レーンをゆったりと流していた。
古賀SAから「軽」が合流してくるのに気付いた。合流レーンをこちらより車1台分先行している。こちらの後ろはがらがらだ。「軽」がスピードを緩めてこちらの後ろに合流するものと思い、スピードを落とさずにそのまま走った。別に「軽」の合流を邪魔するつもりはまったく無かったのだが、どうやら「軽」は誤解したようだ。合流レーンが切れるぎりぎりのタイミングでスピードを落としこちらの後ろにぴたりとくっついて来た。追い越しレーンもがらがらなのに走行レーンをたったの80km/時でのんびり走るフィットシャトルハイブリッドにぴたりと張り付いたままだ。いわゆる「煽り」に入ったのだ。
こちらは数km先の若宮インターで下りるから僅か数分の我慢でこの煽りから抜けられると思い、そのまま80km/時でオートクルーズした。募る不愉快。まったく、この「軽」くんは人間が小さい。些細なことでイラッとなり自分の非に気付くことも無く感情をむき出しにする。馬鹿げたことだ。
さ、下りるぞ若宮インター。ウインカーを出して車線を出口レーンに変更した。
と、なんと「軽」くん、ウインカーも出さずに付いてくるではないか。その執念深さに不愉快とは別の感情が湧いて来た。とんでもない人種の気分を害してしまったのかも知れないというちょっとした恐れだ。