縦走 その2

次はショウケ越え、そして若杉山です。

奇岩に目を奪われ、木々の切れ目に宇美町方面の眺めを愉しみ道に戻ろうとした時、濡れた石に足を取られ前向きに転倒しました。
かなり危なかったです。運が悪ければ大怪我したでしょう。
前につんのめりながら、杖代わりに持っていた木の枝の先端の黒い影が首のすぐ右側を掠めるのを見ました。


ショウケ越えって一体何なんだろうと思っていましたが、それは谷越えのことでした。篠栗宇美町をつなぐ切り通しのような狭い谷があるのです。

昔は難所中の難所だっただろうと想像できます。丸太の橋とかかずら橋とかが架かっていたんじゃないのかなぁ。
今では立派な橋が架かっています。下の道をたま〜に車が通って行きます。

さて若杉山山頂まで2.3km。しかも標高は681mと比較的低い。
楽勝だなと思っていたら、急激に天気が回復、暑くなり、杉林の急坂、どろどろの草道、そして越えても越えても尽きない背越えで汗だく、水不足、熱中症への恐怖でめちゃ不安でしたね。
そんな中、若杉鼻に辿り着いた時は感動的でした。
岩が山の外向きに露出し、木立が切れ陽光がシャワーのように降り注ぐ中を登りきると目の前に美しい眺めが飛び込んで来たのです。

南には朝から縦走してきた山々、正面下には宇美町と四王寺山がくっきりと見えました。
しかも、ここまで来たら山頂は間近にあるわけです。
嬉しかったですね〜。


若杉山山頂。

拍子抜けするほど何の変哲も無く、人の手に染まった山頂です。
無線設備の中継所が建てられているのでそうなんです。
ちょっとがっかりしながら最後のおにぎりを食べ、最後の水一口を飲みました。
あぁ、水が無い。やっぱ最低1リットルは要るね。いろはす1本じゃだめだめ〜。


残るは岳城山のみじゃん。しかも一番低い山だよ。何とかなるやろ。と自分を励まして山頂を下り始めました。
少し下りると太祖神社が見えて来ました。篠栗八十八箇所めぐりの幟が立っています。
ここなら水を手に入れられるかも。そんな期待がむくむくと湧き上がり、心なしか軽くなった足取りで進むと、
ありました! 自動販売機。
こいつに出会ってこんなに嬉しく思ったのは初めて〜。
いろはす130円。冷たぁい。うまぁい!


太祖神社の手水場の水でズボン裾のどろを洗い流し、すっきりした気分で辺りを散策。

すると、この地が何ともアメージングな場所であることに気付きました。
ここに来たら、是非、奥の院に行ってください。


悪い心の持ち主は通ることが出来ない巨大な岩の割れ目道。

そこを抜けると、なぜか深海の巨大ダイオウイカが大きな目でこちらを睨んでる。

崩落の恐怖に押しつぶされながらくぐる岩の割れ目。

この地にイザナギノミコトを祀る神社を建立したご先祖様の気持ちが伝わって来ます。

この太祖神社には真っ白で神々しい女人の像があります。それは神功皇后です。

三韓平定に臨む仲哀天皇に付き従い九州まで赴いたものの突然の天皇の死に遇し、自ら半島に出でんとした勇ましい皇后です。
彼女の凱旋の後生まれたのが応神天皇とされており、一つの王朝の節目なのです。
九州にやって来た時、神功皇后は身ごもっており、この像はその姿を表しているかのようにふっくらとしています。


この像の裏に一本の道が林に向かって伸びており、これが岳城山につながる近道なのです。

この道はcapのGPSは知らなかったようです。
この道標に気付かなければGPSが示す遠回りの道を進むところでした。
この気付きは神功皇后像がもたらしてくれたんだと感謝感謝!


岳城山に進み始めてすぐの下りで、道の真ん中に20cm角程度の平らな石が目に入り、何気にその石の上に右足を置いた瞬間でした。
まるで氷の上のようにするりと滑り、今度は仰向けに、あっという間も無いくらいのスピードで転倒しました。
capの背中はその石に叩きつけられました。
この時も、倒れながら背中が石に叩きつけられ酷いことになることを覚悟し恐怖しました。
しかし、背負ったリュックが救ってくれました。
capのリュックは弾力があるのです。
リュックが石に当たった次の瞬間には、つぶされたリュックが背中をポンと押してくれ、仰向けに倒れたことが嘘のように下り斜面に直立していました。
なんて幸運なんだろう。
この幸運は喜ぶべきです。そして、二度と濡れた石の上に安易に足を置かないことを我が身に言い聞かせるべきだ。
この幸運と戒めは、今思えば神功皇后の御心だったのかも、、、
以後、岳城山への道を超慎重に歩いたのは言うまでもありません。


岳城山展望台からの眺めは、若杉鼻のそれよりももっと素晴らしいものでした。
これまでの疲れと痛みを完全に吹き飛ばしてくれました。
昼まで降った雨のおかげでしょう。
澄み渡った空気は僕らの視界を少しも邪魔することなく、玄海島の遥か遠方に対馬の島影までも望むことができました。

先に来ていた大学生と後から来た大人と三人であれはヤフードームだ、あれが玄海島、あれは対馬じゃないかと男三人ではしゃぎました。


最後は須恵町ほたるの湯でまったり。
両足の疲れを癒しまくりました。
入れ墨客お断りの注意書きにもかかわらず、胴まわりのほとんどが入れ墨の男がやや強張った表情で入って来たのには驚きました。
もちろんcapを含む先客達は彼がインビジブルであるかのように無視したのでありました。


人との触れ合いが沢山あった今回のハイキングで、体力的にも自信が付きました。
これなら九州横断邪馬台国ハイキングもやれるぞ!
そう思った次第。