壱岐周遊キャンプ (長文失礼)


140531Sat〜0602Mon 壱岐周遊キャンプ
博多港ベイサイドプレイスの第二ターミナル10:00発のフェリーに乗った。行き先は壱岐郷ノ浦港。二等室で隣に居合わせた5歳のひびき君と仲良しになった。

ひびき君と一緒にトビウオが飛ぶのを見た。随分長く飛んだ。一番飛んだのは50m以上だと思う。

郷ノ浦港壱岐チャリを借りた。


結構ご機嫌だ。パナソニック製の電動アシスト自転車。満充電で100km位はアシストしてくれるらしい。充電時間がたったの1時間ほどというのが嬉しい。
残充電量を%で表示するのだが、100という文字がすごく心強く感じられた。90そして80と減るにつれ不安になった。
最初のキャンプ場の出会いの村では炊事棟で充電することができた。お陰で二日目は再び100%からのスタートになった。

二日目のキャンプ場の串山キャンプ場は隣の海水浴場の管理棟の外にコンセントが有るのを確認している。明日の朝充電してみる。もし充電できなくても今日の残りは80%だから明日1日の分は十分あるだろう。結局充電はできなかった。
壱岐には高い山は無いが(最高でも250m程度)、平地も無い。アップダウンの繰り返しだ。だから普通のチャリでは辛い。壱岐チャリなら急坂でも力強く背中を押してくれる。
見た目はママチャリだから所帯染みててダサいけど、旅の供としては最高のパートナーだ。すっかり気に入った。
前かごと後ろかごが付いた日常のママチャリに非日常のソロキャンパーが乗ってるわけで、初めはそのバッドチューニングというかアンバランス振りを想像してにやけて走っていたのだが、その実力を知ってからは、人間見た目じゃない中身だよ!、なんて妙に納得して走ったのだった。

出会いの村は炊事棟やトイレにシャワーなど設備が充実していた。シャワーは水だったが贅沢は言えない。汗を流せるのは気持ちいい。トイレは水洗で、驚いたことに和式ながらハンドウォシュレット付きだった。1m程度のホースの先にノズルがありこれのハンドルを引くと勢いよく水が出るのだ。実際に使ってみたが実用的だった。

炊事棟の水はもちろん飲めるのだが、味は良くない。そう言えば、フェリーの給水器の水もそうだった。だからそのままでは飲まず、沸かして紅茶を飲んだ。

場所的には海沿いの原っぱで、虫が沢山いた。アブラ虫のような緑色の小虫に往生した。
また草が隙間なく生えているので、厚紙製の組立式テーブルがなかなか立たないのが困った。それに夜にはすぐに結露が始まり、厚紙がぶよぶよになってしまった。

シャワーを浴びた後着ていた物を水洗いして干したのだが、結露するような環境で乾くはずもなく、朝起きて確認してみると、かえって水を含んでしまっていた。

6時くらいの日の出に合わせて物干しの向きを変えて朝陽をいっぱいに浴びるようにしたが結局出発前の9時半くらいまでには乾かず半乾きの状態で出発するしかなかった。トレポ(トレッキングポール)とロープで作った物干しはそれなりに活躍したのだが、、、
服もタオルも速乾性の物が良いと思った。

結露で困ったのはもう一つ。テントのアウターとグランドシート。アウターの外はすごい結露だった。イン側も結露していた。何度もバサバサと振って水を弾き飛ばしキッチンペーパーで拭き取った。ここで活躍したのが壱岐チャリ。これにアウターを掛けておいたら朝陽を浴びて瞬く間に乾いた。グランドシートの裏側の結露もすごかった。同じ要領で壱岐チャリを活用した。

壱岐チャリを借りた時にお得なしまとく通貨を買った。五千円で六千円分のしまとく通貨を買えるのだ。気を付けるのは、使うのは千円単位でお釣りはもらえないということ。使える店は結構多いので、これは利用するしかない!

さて、サイトシーイングだが

初日は、牧崎の鬼の足跡を観た。

こんなのは初めて観た。
火山の火砕流や溶岩流がじっくり冷えてできる柱状節理の岩が波に削られて出来た縦穴。まだ削られ方が足りないとみえて、上の部分が落ちずに橋の様に繋がっており、上から見るとぽっかりとでかい蟻地獄が有る様に見えるだろう。なんでも、むかしむかし大鬼が鯨を捕まえてぐっと踏ん張った時に出来たらしい。
柱状節理というのは宮崎の高千穂峡の写真を見てもらったらわかるが、自然が作った巨大な岩の柱が沢山くっついて連なってるやつ。たぶん崩れやすいと思う。

二日目は、まず猿岩。壱岐の西岸。
まさに猿だった。
誰かに説明されるまでもなく、これは猿だ。見る場所を変えると猿ではない。人間の都合の良い向きに猿の横顔を見せているのだ。


次に古墳群。壱岐の内陸中心部。
笹塚古墳の石室の一番奥の石棺のある室の天井にうごくものが居た。そう、コウモリだ。


ヘッドライトで照らすと目ではなく耳をパチクリして左右に身体を捻りながらこちらの様子を窺っていた。暗い中で写真を撮ったが、見事に写ったもののピントは甘くなった。それにしてもここでこいつに会うとは予想もしなかったので、驚きとともにこれだから好奇心は止められないと思った。
古墳は沢山有った。鬼の岩屋、百合丘古墳群、双六古墳などなど。いずれも5世紀から6世紀後半の古墳らしい。円墳が多いが前方後円墳もあり大和との強い繋がりを示している。

古墳時代の中心地は勝本や芦辺辺りだったようだ。
他に生池城跡を観た。福岡の大野城跡を彷彿とさせる造りだった。小規模だが。

最も印象深かったのが、壱岐の土台石。壱岐の北岸。
岩の絶壁。つるんとしてもなく、ごつごつしてもなく、幾何学模様というかガラスの破片を埋め込んだ様な三角の角の有る絶壁。

びっくりした。圧倒された。ここまで来て良かったと嬉しく思った。
看板の説明によると、砂岩と真岩の層が交互に並んでいるそうだ。シェール岩の様に薄く剥がれて崩れる絶壁。壱岐の下にはこの岩があり、その上に場所によって柱状節理の岩が乗っているらしい。

また、溶岩が下から隙間を上がって冷え固まった場所もある。
壱岐の成り立ちの途方もない時間の記憶が刻まれている絶壁だ。

その先、イルカパークを横目に進むと、この先磯遊び事業につき関係者以外は行かないでくれ、みたいな遠慮がちな看板がある。構わず上り坂を越えると串山キャンプ場が有った。

坂を下ると右手に串山海水浴場、左手が串山キャンプ場だ。

この広い空間に人間は自分一人。ロンリーではなくアローンだ。
シャワーにトイレ、炊事棟、必要なものは揃ってる。ただ、、、敷地の殆どが草ぼうぼうだ。
呆然となるも、シャワー•トイレ棟の近くだけは最近草刈りしたらしい。松の木の下にテントを構えることにした。

設営後、勝本漁港マルエーに食料を仕入れに。
買うのは地産物だけ。あっ、水もね。
ついついビールを2缶。
一日の肉体的疲れを癒やすのはやはりビールかな。
マルエーからキャンプ場までチャリで約10分。その間、頭の中はビールの泡だらけだった。

刺身とビールで癒された後、地産のてんぷらメインのスープを作って食べた。
このシチュエーションで作るシンプルな食べ物。なんでこんなに美味いんだ!


明日は、元寇古戦場、原の辻遺跡一支国博物館。
芦辺港16:15発のフェリーで博多へ戻る。

三日目の朝。04:50に目覚めた。すぐに結露をチェック。良かった、アウターのインもアウトも結露無し。なぜだろう? 出会いの村とは全く違う。
テントの外ではうぐいすがあちこちで鳴いている。他にも雀の学校よろしくピーチクパーチクと一寸も止むことなく鳴き続ける鳥もいる。これは後でわかったのだが、声の主はめじろだった。カラスも様々な声でコミュニケーションを取っているようだ。犬の様な鳴き声もするが、実はカラスだろう。鳴き声のする方向が次々と大きく変わるから。並の犬の素早さではあり得ない。

朝ラーを食べキャンプ場を後にしたのは8:20頃。

まず聖母宮を参拝。


勝本の町並みをチャリング中に事故が起きた。痛っ!
目の前に突然スズメバチが現れ、そのまま進むと目線の高さで顔にぶつかる。過剰な反応は危険だと常々自分に言い聞かせているのだが、ぶつかる直前まで目を離さずそのまま進んだものの、さすがにその瞬間は頭を左に避けた。次の瞬間、バランスを崩して民家の板壁に左肩が激しく接触した。転倒はしなかったが、左人差し指から出血、左肩が少し腫れ上がった。
幸い民家の壁は傷つくことなく、弁償沙汰にはならなかった。完璧な自損事故だった。
指には絆創膏を巻き、肩はそのまま痛みをこらえてチャリングを続行した。

元寇古戦場を巡り、神社を巡り、壱岐は歴史の国だと体感した。

新城神社で出会ったおっちゃんにマムシに気を付けるよう言われ、その後はやたらめったらに草むらに入れなくなってしまった。
なんでも彼のご両親は二人とも噛まれたそうだ。すぐに病院に行けたので大事には至らなかったとか。
マムシは人のアキレス腱辺りをがぶりとやるそうだ。だから農作業や草刈りの時は常にゴム長を履くのだそうだ。

原の辻遺跡吉野ヶ里遺跡のようだった。

雨の中一支国博物館に行ったのだが、なんと、毎月曜は休館日だった。
楽しみを一つ実現出来なかった虚しさを抱えて帰りのフェリーが出る芦辺港に向かった。
お陰で時間が余り、立ち寄らないと決めていた大塚山古墳や高御祖神社に立ち寄る事が出来た。

自分土産に壱岐焼酎を買い『船上ののんだくれ』になった。
飲んだのは買った焼酎ではなく、旅に携行して残ったワイン。
フェリーはがらがら。行きとは大違い。月曜だからね。

海上から眺める糸島や福岡の姿は、近付くにつれ郷愁の様な感情を呼び起こした。

やっぱり旅は楽しい。
ソロキャンプは常に不安がつきまとう。
でも色んな事が起きるのが楽しい。
全ての生き物が友達だ。
そんな気持ちで過ごし、対処するのがいい。