とんだハプニング 〜雷山山頂で野宿〜

いやはや参った!
不幸にもと言うか、幸いにもと言うか、予想外の経験を、、、やっちまいました。


8/3(土)のハイキングでのこと。
無くしたサングラス探しは、ブッシュの中で2度もススメバチに行く手を阻まれて断念。
彼らはこちらが大人しくしていれば、いきなり襲っては来ないですね。
辺りをぶんぶん威嚇して飛び回りながら様子を見てますね。
その場にしゃがみこむのが一番ですが、一度肩に止まられた時は冷や汗たら〜りでした><


サングラスを諦めて、金山登山へ。

途中林道工事で通行止めがあったり、登山を舐めてる(半年前までの自分の様な)カップルに「金山はこっちですか?」と尋ねられたりして、今日はあまり良いこと無いかなって感じでハイキング序盤が過ぎて行きました。


沢を流れる水の音を左に聞きながら登るのは、たとえ顔が汗の幕に覆われていても何か涼しげでいいものです。

あまりの暑さに沢でシャツを水洗いし、絞るのもそこそこに水の滴るシャツを着ること2回。
気持ち良か〜


金山山頂。967m/13時25分

計画より2時間遅れ。
見晴らしは良くない。
こんなに遅れたのは斜度の読み違いが原因。
山頂に居た人々と少し語らい、休憩もそこそこに三瀬峠へと急いだ。


急ぐんだけど、沢の水流と苔むした岩と倒木などが織成す自然美がそこかしこにあり、脚を止めさせるんだよな〜

比較的緩い上り下りを繰り返して三瀬峠着。約600m/15時25分
遅れは全く挽回できていない。

急ごう。次は井原山だ。
すぐに道に迷った。普通なら迷うところじゃないのに〜。
焦っているからだろう、余計なブッシュに入ってしまった。
時間ロス拡大だぁ。


ひたすら登る。
野うさぎと狸に出遭った。


何度も何度も峯を越え、その度に山頂か! という期待を裏切られ、「まだか〜」と叫ぶ。
疲れた体と心がそうさせるのか、並んだ三つの小岩が三地蔵に見えた。

伊原山山頂。983m/17時15分

計画からの遅れは3時間に拡大。
ところが、そんな遅れを焦る思いを360度パノラマが吹き飛ばすんだよな〜


北に糸島市を見下ろせ、ちょいと東に目をやると福岡市、そして南に佐賀、久留米、有明海が見える。
これには圧倒された。
魏志倭人伝に出てくる松浦、伊都、如国、それに吉野ヶ里、磐井が見渡せる。
古代伊都国の人々もこの山に登ったことだろう。
そしてそこここにクニがあることに驚いたに違いない。
山の各所に見張り所も作っただろうな。


ふと我に返ると17時25分。
下山が心配になってきた。というか、今日中に下山できないのではないかという不安が芽生えた。
スマホのバッテリーが切れた。電波を探してたんだろうな。


山の日暮れは早い。
とにかく安全な下山ルートを下りよう。
計画では雷山への縦走ルート途中の洗谷ルートを下りる予定だった。
ところが、このルートは道標にも上級者向と書かれているように、ただものではない。

今回の全ルートの中で最大の難所の沢下りだ。
どんどん暗くなっていく中での沢下りを無事に下り切る自信は無いし、体力も残ってない。


そこで、地図とにらめっこ。
雷山まで行けば車道の「NTT専用道路」に辿り着けるかもしれない。
車道なら夜道でも安心して歩ける。でも距離は長くなるなぁ。


雷山山頂。955m/19時5分

NTT専用道路へ下る道を探すも見つからず、探しながら、「これは野宿に決まりだな」と覚悟が固まっていった。


20時。寝る場所探し。
山頂は木は無く開けている。寒いし、虫などもあまり居ないようだ。
山頂すぐ下の森の中は虫がいっぱい。
試しに懐中電灯を点けると、あっという間に虫たちが集まって来た。
これで山頂野宿に決まり!


この日は南から北へと10m/s程度の風が吹いており、955mの山頂は雲の中となったり、雨が降ったり、突如として晴れ上がって天頂に美しい星達が見えたりした。


風が最も弱まる場所と雨を最も凌げる場所を求めて、比較的広い雷山山頂のあちこちを転々とした。
結局大きな岩の割れ目で雨を凌ぎ、雨が上がったらその岩の南側の草の上にうずくまってうとうとした。


心は悲観的ではなく、むしろこの境遇を楽しんでいた。
花火の音がすると起き上がってそれを観た。
遥か下、地上にへばり付く様に赤や黄色の花火の球が小さく開いては消えるのが見えた。


凍えるほどではなかったが、風と雨に体温を奪われ風邪をひいてしまうのではないかと不安になった。
着替えのTシャツを重ね着し、カーゴパンツの裾をソックスの中に入れて肌の露出を小さくした。
自分の心がお化けを見せるのではないかと心配だったが、目の前にそれは現れなかった。


時間を気にしている間は遅々として進まなかったが、雲の流れや木々の揺れ、風の強弱を観察している時に、時間はぐっと進んだ。


朝4時までうとうと状態で過した。
陽が上がったら行動開始だと思っていたが、山頂のすぐ上の雲は南側でどんどん消えるのに北側で次々と作られ、結局居座っている。
上るお陽様など見えようはずもない。


空全体が時折白く光り、しばらくすると遠雷が聞こえる。
これは早く動き出さねばならないと感じた。
始動が遅れて下山途中に雷雨に襲われるのを怖れた。


朝5時過ぎ、明るくなって来た。森の中の登山道を覗くと何とか歩けそう。
よし、行くぞ!
あまり眠れなかったが体力はかなり回復している。
最短ルートは、例の上級者向け洗谷ルートだ。これを下る。
水は50cc程度も無い。沢を下る途中で沢の水を飲むことになるだろう。


洗谷分岐に到る途中で道に迷い、気付いたら雷山方面に戻っていた。
なんてこった!
自分を罵りながらも迷ったきっかけはすぐに思い当たった。途中の放尿だ。
済ませた後に振り返った時、左右を間違えた。何の迷いも無く来た方に戻ってしまった。
これは仕方が無い。
薄暗く細い山道でのこと、左右を見分ける目印は無い。
こんな時は、持っていた杖代わりの棒を行く方向に倒してから用を足すという行動が必要だと感じた。


洗谷分岐到着。6時30分。
すっかり明るくなった。


洗谷ルートは思った以上の難所だったが、スリル満点でエキサイティングだった。
急斜面というより垂直の崖と言う方がぴったりな岩壁や木立の崖をロープを頼りに下りる。
最も大きな落差は15mくらいだったかな。
そんな場所が幾つもあった。


沢の横断も数え切れぬほど。
転倒したら怪我は免れない。
緊張の連続だった。
初めての本格的沢下りだった。
一度も転倒せずに下り切ることが出来たのは、この半年間のノウハウを活かせたからだと思う。
また、昨夕、ここを下りなかった判断は正しかった。


途中、湧き水飲み場があった。

ようやく喉を潤すことができた。


下山中ずっと鳴り続けていた遠雷は徐々に近くなり、今にも雷雨になりそうな朝8時45分頃、ようやく麓の車道に出た。

広がった沢の流れでトレッキングシューズ、カーゴパンツを洗い、シャツとソックスを替え、何やら達成感らしきものを感じながら瑞梅寺方面の人里へ歩き出した。


細石(さざれいし)神社を参拝し、波多江駅まで歩くつもりが、糸島市コミュニティバスの瑞梅寺バス停の直前でついに雷雨となり、ここで歩くのをやめにした。
運良く10分後にバスが来た。それを逃すと次のバスは4時間後だった。ラッキィー!!


しかし幸運だったなぁ。
下りきってからの雷雨だったしなぁ。
しかもバスのタイミングにばっちり合ったし。
バス停で買ったスプライト(炭酸)がめっちゃ爽快だった!


2日間のハイキング距離:約38km
登った山 : 背振山系の金山、井原山、雷山
有名な峠 : 三瀬峠(映画・悪人の殺人現場)
沢下り  : 洗谷ルート
野宿地  : 雷山山頂955m
標高差  : 約900m